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原色 貝・化石図鑑


by kasekizukan

捨てる者、拾う者

北海道のとある枝沢のさらにその奥に分け入った時、複雑な模様の石が落ちていた。縫合線だ!と慌てて拾い上げたものの、先行く案内人は、何事も無かったかのように前進する。そう、こんな物を拾うのは邪道であると。確かに単なる気室の一つではある。地元の方が拾わないのは当然だろう。しかし、鉱物が好きな方ならどうだろう。面白いことにアンモナイトの気室を充填する鉱物は何種類か存在する。一番多いのが方解石などの炭酸塩鉱物である。茶褐色からレモン色などさまざまである。三笠などでは、黒褐色の重晶石を見たことがある。ところが極まれに蛋白石(オパール)に変化したものが産出する。クリーム色の艶のある綺麗なものだ。ただし、宝石質のような遊色は現れない。

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 残念ながら、これは蛋白石ではなく石英質のもの、やや晶質ぎみだが、これで透明感があれば瑪瑙となる。螺環の太さからしてパキディス系だろう。ノジュールに含まれていたアンモナイトが、風化により分離し、さらにその殻表が剥がれ、隔壁に沿って水分がしみ込み、経年により、バラバラになってしまったのだろう。アンモナイトを知っていれば、別に不思議でもなんでもない形だが、江戸時代であれば、奇石珍石の類として、神社仏閣などの宝庫に収められていたかもしれないが、現在なら、天狗様の爪同様に、いとも簡単に謎解きされてしまうであろう。当時は本当にどの枝沢でも転がっているのを見かけたものだが・・・・まあアンモナイトの構造上の説明には役立つだろうが、こんなものをわざわざ持ち帰る物好きは、私ぐらいだろう。


# by kasekizukan | 2019-08-01 22:19 | アンモナイト

日本の化石

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到着早々に、ページをめくる。前回の初版本は完売したそうで、今回は新たに入手した新標本を加えての、さらにバージョンアップした内容のようだ。確かに前回より30pも増えて380pとなっている。すでに前回のものをお持ちの方には、あえてお勧めはしないが、まだ所有していない方には朗報だ。30pも増えて料金は据え置きの15000円である。呑み助のひとであれば、二三軒ハシゴした程度の金額だろう、仮に飲まない人であれ、この程度の金額、ちょっと何かを我慢すれば、耐えられる金額だ。ちなみに私は100均のティーパックを買っている。ジュースなら一缶で終了だが、お湯さえあれば16杯飲める。たばこなどは論外だが、切り詰めようと思えば、なんとでもなるものである。限定100部なら、なくなるのも時間の問題だろう。
# by kasekizukan | 2018-11-22 19:55

ハチノスサンゴ

今からおよそ30年ほど前、高知は佐川地方の横倉山に、ある地質調査会社の社長に連れて行っていただいたことがある。土砂降りの中、杉林奥の採石場跡地に向かっている途中、一人黙々と塹壕を掘る人物と遭遇した。大きな水を張ったバケツに、泥の岩を入れ、何やらタワシでゴシゴシ磨いている。何をしているのかと尋ねると、子供の頭ほどある岩をこちらに向け、なんだと思う?と逆に尋ねられた。泥がまだ半分ついた状態のその石の縁には、見事な床板構造が現れていた、それはマッシュルーム状のハチノスサンゴの塊であった。
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 偶然にも越知の宿で一緒になったこの方は、わざわざ一人で車で来ていた、埼玉か群馬の中学の先生であった。一週間ほど滞在するとのこと、すでに何百kgというサンゴを採集したと、夕食中自慢気に話されていた。なんでも石灰岩の表面には泥が付着しているため、その泥をはぎ取らないとファボシテスかどうかはわからないため、わざわざバケツに水を汲んで山を登るのだとか。ゴトランド紀が初めてだった私は、握りこぶし程度のハチノスサンゴを採集したのみ、やはりプロは違うと驚かされた。あれから現場はどうなったのだろう。連れていつていただいた地質会社の社長も、また地質会社も今はない。おそらくもう二度と行くことはないであろう横倉山、そして、また二度と採石することもないであろう横倉山よ永遠なれ。
# by kasekizukan | 2016-10-19 20:31
 頂いたアンモナイトを同定しようと、あちこちから関連書籍を引っ張り出した。見た目ではShuparoかな~?と考えたものの、自信がない。そこで、最後はこの本で同定することとなった。
やはり同定にはこの一冊である。_c0204682_22211898.jpg

 なるほど、側面だけではわからなかったが、腹面が図示されていることで納得がいった。やはりShuparoではなかった。三笠市の化石写真集や東海大学出版物も閲覧したものの、結局最後に役にたったのは、一個人で出版された北海道のアンモナイトであった。さすが、アンモナイト好きな方が考えて出版しただけのことはある。残念ながら書店では販売されていないのと、自費出版のため、学生には幾分つらいだろうが、大人ならしれた金額である。北海道のアンモナイトを集めている方々にはバイブル的な存在であろう。
# by kasekizukan | 2015-07-21 23:06 | アンモナイト

ムカシキリガイダマシ

 キリガイダマシ、化石をやっていると、よく出てくる単語でもある。浅海域から、やや深場の砂泥質、暖流から親潮まで、かなり広い適応環境をもち、比較的進化も早いため、有効な示準化石とされている。ただし、産出数は多い割には、殻頂から殻口まで完全に保存された個体は、なかなか採集が得難いものである。その一つ静岡県の掛川地方より産出する大型のキリガイダマシが存在する。種名ペルテレブラ、和名をムカシキリガイダマシと言う。
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 どういうわけだか、こいつは多産するわりには、なかなか状態の良いものが採集できない。また、どの図鑑や記載標本を見ても、まともな物が載っていない。私はどうにかして、こいつをうまい具合に採集できないものかと、ボンドや石膏なども考えたものの、イマイチうまくいかない。結局は、運を天に任す採集で難局を打開した。
 この個体は螺層が14保存されている。螺条や螺層の膨らみなどの特徴もよくわかる。ただし、やはり殻口部は破損している。もし完品であれば、おそらく10cm近くになるだろう。こんなものの採集に時間を費やしたため、肝心のサメの歯はさっぱりである。やはりここでは、貝をじっくり採集するか、それともアムシオやアナダラ、グリキメリスなどを粉砕しながら、フルイで小さなサメやエイを探す作業に没頭するかで、収穫が大きく変わる。私はもちろん、前者の貝のみ採集に没頭する。
# by kasekizukan | 2014-12-26 21:36 | 貝化石